9月13日の蝉
今日、蝉が鳴いた。突拍子もない。
私みたいだ。私も予定日を1週間ほど過ぎて産まれたと聞く。よっぽど母親のお腹の居心地がよかったのだろう。
それが、数分鳴いただけだった。程なく、辺りの様子がおかしいと気づいたんだろう。ちょうど、そこに通りがかったトンボさんに尋ねたのに違いない。
「ちょっとつかぬことをお伺いしますが、今日は何月何日?」
「あんた、何してはりますのん。もう、9月も半ばでっせ」
そのときの蝉のショックたるや、筆舌に尽くしがたいものだったろう。もう、誰もいないのだ。いや、男性がいないのは、この際どうでもいい。女性がいないのだ! いくら鳴こうが叫ぼうが、本懐が遂げられない。
爪先で地面をホジホジして「ええよ、ええよ」といじけたのは、誰でも容易に想像がつく。たぶん、ホジホジしたついでに、穴掘って、もう一度土中に潜ったのではないだろうか。
哀れな話だ。私は涙ぐんだ。