今宵の春は

阪神梅田のB2の改札出た右側に立ち飲みジュースコーナーがあって、母親が買い物帰りによくそこでジュースを飲んでいた。だから、わたいも一回飲んでみたいと思っているが、車椅子に座っているので立ち飲みにならず(そんなことはどうでもいいんだけど)何となくまだ飲んだことはない。
その向かいに先月、ケーキ屋ができた。ケーキの百円ショップのような感じだ。とにかく安い。105円から高いのんでも189円。できた当初は「安いな。おいしいんかな?」と買うのをためらいながら、横目でチラァッ、チラァッと盗み見しながら前を通ってたんだけど、あるとき、訳あって無料で落語を聴かせてもらう機会があったので、気が大きくなって勢いでケーキを買った。わたいはどうも何かで得をした勢いでないと、安い物でも買えないという癖(へき)があるらしい。
値段にしてはおいしいね。甘さもそんなにひっこくはないしね。105円の抹茶ババロアなんかはこの値段でなくてもおいしいんちゃうかと思う。
とにかく、母親が死んでから食生活の形態が変わったので、とんと口に入らなくなったものが少なくない。もう2年以上、肉を焼いて食べてない。どなたかわたいをステーキハウス、いや、そこまで言いますまい、焼肉の大同門に連れてってください。おねだりで横道にそれたが、ケーキなども食べることが減った物の一つ。シュークリームなんかも2年以上食べてないな。わたいは甘党ではないので、そんなに欲するということはないんだけど、2年以上もとなると、やっぱりちょっとは恋しくもなる。今度買おう。いや、この土曜もケーキを買ったんだけど、買ったん2回目で店のオネエチャンに「いつもありがとうございます」と言われたんで気をよくしたということもある。人間、あいそは大事だよね。ほんで、車椅子はすぐ覚えてもらえる。普通、あれだけ人通りが多かったら、2回で絶対覚えてもらえない。これは得だ。ささやかな得を抱きしめて生きていこうと思う。
この土曜に買ったのは鶴瓶師匠の高座を聴いて何となく。別にケーキの噺をしたわけではないけど何となく。聴いたことのない根多をやらはった。お葬式風景の噺だ。現代版「くやみ」ともいうべき雰囲気もある。枕で、先週、おかみさんのご姉妹の五十回忌で松山に行ったと言ってはったし、それに続いて文珍師匠のお父様のお通夜もあった。それでこの根多をやらはる心境になってはったんかな。
五十回忌、法事・・・、うちは去年、父親の七回忌、母親の三回忌があったので、しばらく法事はない。そもそもわたいは法事に興味がない。そういう区切りに亡き人を偲ぶというのが肌に合わんのだ。区切りに、区切りだからといってわざわざ偲ばんでもええんです。
ケーキを食べることが減ったとは書いたが、これは2年以上食べてないということはない。クリスマスとか誕生日とか、その他、別に何でもない日でも、ふと思たら苺のショートケーキを買うてます。ほんで、仏壇へ。母親、これが好きやった。いろいろ食べた方がバラエティがあってええんちゃうかと思うが、それでも苺のんがあれば、それだけでよかった。
それで土曜日も買った。ただ、値段を聞いたら怒ると思う。ケーキに限らず、食べ物に限らず、どんな物でも母親は安物を買うのは嫌いだったから。
去年の4月10日の日記http://d.hatena.ne.jp/tanich/20060410参照。夜桜の道を帰る。この日は子供は通ってなかったが、道に落ちた花びらの中に、花びら5枚付いて原形をとどめた桜が1輪落ちてたので、それをひらって帰る。今年も枝を折らずにすんだ。
ケーキと桜を仏壇に。