落語と歩んで苦節○年

以前、落語会の常連、落語通の極み、重鎮のおっちゃん、Kさんが落語会に行って、チケットを持ってくるのを忘れたことがあったんだそうだ。でも、問題なく入れました。「あっ、チケット忘れた」このボソッとした一言が、紛れもなくチケット替わりになったのだ。
昨日、ある落語会に行った。そこは入り口に一段、段があったり、他の客と違う通路を通らなくてはならなかったりして、ちょっとだけ入るのに手間がかかる会場。お手伝いに来てはる若手噺家さん方の世話になったりしなくてはいけないので、早目に行くつもりだった。これまで、開場前に先に入れてくれたりしてたから。
ところがね、駅のホームの柱にボックスが付いてるのんあるでしょ。業務連絡用の電話かなんかが入ってるやつ。目的駅に着いて電車降りるなり、そのボックスで頭ガーンよ。ボックスの下の角がわたいの頭と同じ高さで・・・。しばらく記憶喪失よ。チュンサンになりました。(古いか!ほっとけ!今、午前中に「冬のソナタ」の再放送やっとんじゃい!サンヒョクのお父さんのファンになりました)「タリラリラーン」と叫びながら、谷町界隈を彷徨ったようです。目撃者よ、出でよ。
どのくらい時が経ったのでしょう。道行く人の雑踏にもまれながら、向こうから歩み来るオネエサンのミニスカートの足に見とれ、ふと「好き」と呟き、ハッと我に返ったわたいは「これは一大事!」とばかり、車椅子で六方を踏みながら会場に向かったのだけれど、時すでに遅し、他のお客さん、列をなして順々に入場してたのさ。
入り口付近でしばらく待つ。入場客の整理係の方が「人手が足りひんからちょっと待ってね」「うん」
前売のお客がみんな入ってキリがええところで「チケットは持ってますよね」「うん」そこで若手噺家さん呼んで、やっこらしょと入れてもらう。
客席に着いてホッと一心地。「ホッ」ではあるが、なんか心の中にわだかまりがある。頭をうったせいばかりではなさそうである。何やったかなぁ。出てきそうで出てこん。そうや、こういうときは歌を歌とたらええんや。と、昔風の漫才にすがった。
♪忍び合う恋を〜、包む夜霧よ〜・・・、夜霧よ〜今夜も〜ありが〜と〜〜〜
そうや!チケット、もぎってなかったんや。
どさくさでチケット、改めてないのよ。「持ってます?」「うん」この「うん」がチケット替わりになったのよ。
わたいもついにこの域になった。