きらきら

新歌舞伎座に行ってきた。初めての商業演劇系だ。松井誠新春特別公演。
松井誠、母親が大ファンやった。新歌舞伎座もよく行っていた。だいたい、男前に弱い。田村正和とか、洋モノではアラン・ドロンとか。父親がブサイクだからと、自分の知り合いの前に出すのを極端に嫌がった。父親、えらい災難だ。まっ、確かに男前ではないが、そんなんいうとったら世の中の男の半分、いや、3割?、2割か、くらいは道歩けん、という容姿の父親だった。
松井誠は今「くらわんか」というお芝居をやっている。この脚本は宝塚の物で、宝塚で過去に何度か公演をやっている。落語のネタがわんさと織り込まれた喜劇だ。宝塚の公演のときから興味はあったので、今回行けてよかった。チケットの手配やらいろいろお世話になった竹のスケさんに感謝。
もちろん、行きたい理由のもう一つは母親の代参だ。亡くなる数ヶ月前にも松井誠の公演があった。その頃、母親は骨粗しょう症の影響で、歩くのがちょっと辛くなっていた。だから、新歌舞伎座エスカレーターが恐いと言う。ステップが動くから初めの一歩が恐い。そんなん、なまじ歩いていくからエスカレーターを使わなあかんようになるんで、俺の車椅子に乗っていったら、向こうのスタッフがどないぞしてくれるてと勧めたんやが、結局行かなかった。わたいは母親の病気を知っているので、とにかく行ってほしかったんやけど。
当日行ったら、入り口の前はおばちゃん以上の年齢層でごった返していた。開演が夕方4時やもんね。働いている人は行けません。ファン層を考えたらこれでええんでしょ。4時からで終演7時半。家に帰ったら9時前くらいだから、寝るのにちょうどええ時刻。これが6時半からだと終わるんが10時になるから、おばあちゃん世代は行けません。
入ったら、電動は重いので手動の車椅子に移り、階段をえっさかほいさか上げてもらう。わたいの他にももう一人車椅子のおじいちゃん。そやから母親、行ったらよかったんや。お年寄りの客が多いので車椅子の扱いには慣れてはる。
客は7割くらいの入りやったか。ひと月公演連日やってるからそんなもんでしょ。車椅子のままの観劇だから一番後ろだけれど、目の前の席2列、誰もいなかったので、前の頭が気になることはない。客の中に、どう見ても男のオネエチャンがいた。両肩出してね。寒いでしょ。ゲイバーの人ね。第2部がレビューだから、ショーの勉強も半分ありの観劇でしょね。
開演の幕上がる。電飾きらきら。松井誠綺麗ね、ホンマに綺麗。母親の顔写真の額持っていこ思たけど、周りの客が引くと思うのでやめ、2年前、母親が葬儀場に行った後、寝ていたベッドでひらった髪の毛を持っていった。「きれいやな、ホンマ」一人で宙に話し掛けるのには、辺りに誰もおらん一番後ろが都合がいい。
すぐに第1部「くらわんか」が始まる。小島慶四郎さんや八方師匠が脇を固めた見応えのある芝居。元タカラジェンヌの綺麗どころお二人も、わたいとしてはよかったね。雀さん師匠の役どころがもう一つだったのが意外。全体的には、ここまであれやこれやの落語のネタを数、詰め込まんでも、とは思ったが、松井誠風上方落語の世界の雰囲気はよく出ていたと思う。
1部が終わって2部までの幕間が35分。みんな、お弁当食べるのね。わたい、手持ち無沙汰。ロビーで物販してるとかの場内アナウンスの中に、一つ訳がわからないのが。「本公演では舞台構成の都合上、プレゼントコーナーはございません。プレゼントご希望のお客様はロビー受付にて預からさせていただきます」??? 何を預けるんだ?プレゼントて何だ? 頭ん中がそこに集中。思わず「プレゼントちょーだいーーー!」と大声上げそうになった。そのとき、綺麗なべべ、和服着たおばさんが「何か飲み物でも買ってきましょうか?」と声を掛けてくれた。「ハッ」と我に帰り「ありがとう、いいです」 声を掛ける間のいいこと、ありがたや。
2部のレビュー。電飾きらきら。サンバあり、日舞あり、スタンダードポップスあり、演歌あり、おかめひょっとこの面踊りあり。花魁道中なんてクラッとなるほどの美しさ。
きらきらきらきらきらきらきらきら・・・・・。母親、そう言や、若い頃、宝塚も好きやったしな。この「きらきら」は打ち上げ花火の「きらきら」か。子供の頃から花火好きや言うとった。花火の歌もよく歌ってた。
「ドンと出た花火だ、きれいだな、空いっぱいに広がって、みんなのお顔も真っ赤っ赤」かな。
きらきら・・・、そういうたら、わたいもクリスマスのイルミネーション好きやわ。