まめだのまめだ

こんな人情噺、聴いたことがない。価値観を超越している。噺の内容に関係なく泣ける。他の客は笑っていたが。
今日はまめださんの独演会。入門8年目で独演会。みんなに可愛がられてる証拠だ。客席は文福一門の親衛隊のようなファンの方々で一杯。いつもの繁昌亭の客席の雰囲気と空気が違う。
独演会だから落語を2席。先の「子ほめ」では、励ましの掛け声が飛び交う。掛けてる本人は応援してるつもりなんだろう。わたいはなんか辛かった。まめださんが声を掛けられて、照れだか苦笑だかで笑ってはるし。枕ではともかく、根多に入ったら勘弁したってほしい。でも、まめださんは笑ってる。ここはわたいも笑った方がいいんだろうな。
中入り後、一門口上で、末弟(妹?)のぽんぽ娘さんが、次の「まめだ」は人情噺だから、野次はやめてあげてくれとお願い。これはぽんぽ娘さんの意思で言わはったことなのか? だとしたら、わたい、ぽんぽ娘さんを嫁にしたい、いや、そのくらいの気持ちになった。
ぽんぽ娘さんのお願いの甲斐があって「まめだ」では野次がなくなった。でも、まめださんのいつもの間と、人情噺とのギャップで、客席から笑いが起こる。まめださんも時おり、やっぱり笑ってる。
「まめだ」が始まる前、わたいは人情噺で、本来笑うべきでないところで笑っていいんだろうかと思っていたが、そんな心配はいらなかった。わたいは泣けた。
口上で文福師匠が言うてはった。「小中高、職場とずっといじめられてきた男が、人を笑わせることがしたいと8年前、私に入門してきた」と。その成果がこの「まめだ」なのだ。この根多は小米朝さんに稽古をつけてもらったそう。稽古場風景も頭に浮かぶ。落語は奥が深い。高座に上がるまでのいろいろな事情も噺に表れる。
この日は、落語中もずっと客席最後列で、二つ三つの子が騒いでいた。一門ご贔屓筋の親子連れ客なんだろう。普段なら当然、頭に来るところなんだが、この日は「まぁええか」と思ってしまう。まめださんが高座で笑ってるし。自信なさげに笑ってるまめださんだが、この騒いでる子が大きくなった頃には、高座で笑わないようになっていてほしい。自分に自信を持っていてほしい。うまくならなくていいから。それでいい。