あかんたれです

別名、へタレともいう。ふとした拍子に、卑屈な真の顔が見える。
パンを買った。いつものように店員に、トレイに取ってもらう。わたいの傍にいた客がパンを自分のトレイに取ろうとして、うっかり、パンの前に表示してある、パンの名前や説明が書いてある札を落としてしまう。その札はわたいの車椅子の下に。ちょっと車椅子をバックさせた。20センチほど。すると何か起こった気配が。
店員のおっさんがわたいのパンを1個トレイから落とした。一瞬だけど、ちゃんと落ちてるパンを見た。当たってはないけど、バックしたわたいをよけようとして落としたんだろう。
当然わたいはパンを取り替えてくれるだろうと思ったんやが。おっさんはパンを拾ってそのままレジに持っていった。何食わぬ顔で、あまりに堂々と持っていったので、なぜかよう指摘できなかった。信じられない状況に出くわして、呆気に取られて、わたいは信じられない行動を執った、というか、何にも行動しなかった。ここまで気のちっちゃい人は、千人中一人はいるだろうか。おらへんわな。
一旦言えなかったら、間を外したというかどういおうか、何事もなかったようにパンを買って店を出てしまった。見たのは一瞬だから、目の錯覚か、とも思い、また、指摘して「そんなことはない」と言われたら、もめるん嫌だしな、とも思い。卑屈の絶頂だ。
だいたい、わたいは、言語障害がある者が口で争っていると、無茶な因縁をつけていると他人から思われるのではないかという、けったいなコンプレックスがある。けっこうマジな恥部の吐露だ。
この恥部を改善するには、とにかく開き直って積極性を表に出すしかない。わたいはじっくり頭で考えたら開き直ることもできるんだけど、咄嗟となるとどうもいけない。この弱点を克服しなければ明るい未来はないと、肝に銘じて行動しよう。「開け、開け」と念仏を唱えながら歩きます。