泥の舟

録画していた先週のナイトスクープを見た。かちかち山の泥舟は本当は浮くのではないか、調べてくれという依頼があった。子供のいる若夫婦の旦那が浮くと信じて疑わない。子供には本当のことを教えたいと言う。浮かないとなっているかちかち山は、子供には読ませたくないと言う。

わたいも浮くと思った。舟の表面をどないかすれば。粘土でコーティングして、ある程度焼くみたいなことをすれば。水が染み込まなければいいのだから。でも、粘土は使ったらあかんようだ。ほな難しい、いや、無理か。

とにかく、もちろん素人の頭では無理だ。物理の先生が出てきた。舟の形を計算しだした。わたいのような凡人には訳のわからん数式をごまんと書いて、出た結論が、浮く。柳行李を深くしたような四角い舟だ。舟と言われなければ、四角い泥の箱だ。

左官屋のプロがいっぱい出てきて作り出した。厚さ何センチとか細部に渡り緻密に計算されているので、プロの手でないとできない。泥の他、藁ぐらいは使ってもいいだろうということになって、藁を支えの芯にしたりして、苦労の末に出来上がり。あとはしばらく乾かすだけ。

初めから板の上で作っていて、板ごと池の傍まで移動。舟のへりに触ったり当たったりしないように静かに静かに旦那が舟に乗って、板ごとクレーンで吊り上げて、慎重に慎重に舟を水に浮かべた。

テレビのオンエアは1分くらい浮いていた。実際は2、3分かな。櫂で漕いだりしていた。もちろん、すぐに水が染み込んで沈んだんだけど。

番組では、これで浮いたことになっていた。沈んだと書いてあるかちかち山は間違いだと。

何でや!?!?!?

かちかち山でも、狸が乗って沖に出てから沈んだんちゃうんか。それやったら、実験結果と同じではないか。水に浮かべて即沈んだんやったら、狸が乗ることもできなけりゃ、ましてや溺れ死ぬことなんか不可能だ。

だから、かちかち山は正解なんだと、わたいは声を大にして言いたい・・・ん?、しかし、ここで新たな疑問が。泥舟の作り方を教えた兎はかなり高名な物理博士なのか? また、実際に作った狸はめっぽう腕のいい左官屋だったのか? その頃、クレーンはあったのか?

震えるウサギといい、物理ウサギといい、謎が謎を呼ぶ真夏の夜だ。