枝雀一門7名、上方落語協会入会の真相

九雀です。

いやあ、久しぶりに新聞に出ました。と言っても関西ローカルですが。しかも、名前だけですが。「枝雀一門の7名が上方落語協会に入会」

12/17付けで「上方落語協会」に入会致しました。14年ぶり(だそうです)に戻らせて頂いたわけです。まずは、快く迎え入れて頂いた協会の皆様に感謝を申し上げる次第です。

あっちこっちのブログ・掲示板などで色々な憶測が飛び交っているでしょうか
ら、正確に経緯を書いておかねばなりますまい。こういう場合、いわゆる「書けない事」というのがあったりするのが常ですが、今回は全くそういうことがありませんので、長くなりますが、細かく全て書いてしまいましょう。

協会復帰の発案者は不肖・私でございます。そもそもは、3年前の3月3日に病に倒れたむ雀君であります。リハビリも続けておりますが、まだ噺をできるところまではいっておりません。

家でお母ちゃんと二人で居てても退屈なだけですので、去年から、時々鳴物で同行してもらっていました。「月なみ九雀の日」の鳴物は、む雀君と、うちの倅が担当しています。たぶん聞いてる人は思いもよらないと思いますが、障害を持っている者と不登校の小学生という、ユニークなコンビがやってます。

む雀君には、他の会へも可能な限り同行してもらっていますが、不自由な体に長旅は酷ですし、会場がバリアフリーでないといけませんし、と、なかなか、頻度が上がりません。

でも、落語会でのむ雀君は、「噺家と会える」「自分にできることがある」というわけで、とてもイキイキしています。もっと活動の場を広げられないものか。

ふと「繁昌亭で鳴物をやれないだろうか?」と思いました。繁昌亭の鳴物事情を聞いてみますと、今は若手も忙しくて、鳴物要員を確保するのがけっこう大変だとのこと。

出した結論。「九雀・む雀で協会に戻ろう」。そういえば、たくさんの人が「戻っておいでぇな」と声をかけてくれてもいました。協会に戻ることについて、私にとってもマイナスは何もありません。む雀君がきっかけを作ってくれたような気がしました。もちろん、む雀君の答えも「YES」。

勝手に辞めておいて、虫の良い話です。協会側から反対・拒否される可能性もあります。何らかのペナルティーも覚悟せねばなりません。しかし、こんな頭を下げて堪忍して頂けるものなら、なんぼでも詫びを入れさしてもらおやないかと、腹は決まりました。

一門では、かねてから「協会へ戻るのは自由意志で」という取り決めになっていますので、全く問題はありません。でも、せっかくならば、この際、皆に声をかけて、これをきっかけに戻る人が居れば、それは心強い。というわけで、全員に上記のいきさつやら、思いやらを話しました。

で、結果、7人が入会となったわけです。また、協会からの拒否や反対、ペナルティなどが全くなかったのは、報道の通りです。ありがたいことです。

で、これだけははっきり書いておかないといけないのですが、入会を見送ったメンバーも、む雀君のことがありますので、今回のことはとても喜んでくれています。「私は入りませんが、とても良えことやと思う。」と。

高岳堂」ちゅうブログには、「枝雀一門がギクシャクするのでは・・・」みたいな書き込みがあったようですが、全くそういうことはございませんので、ご安心下さい。(もっとも世の中にはもめてることを喜ぶ人も居ますが、そういう皆さんには期待はずれでごめんなさい。)

記者会見でも「枝雀一門分裂」とかは絶対に書かんといて下さいよ、と言いました。「む雀君の名前もしっかり書いといて下さいよ。」とも言いました。一応、その点はクリアした報道になっていてほっとしました。

私は何でも将棋にあてはめて考えます。将棋には

1、「指した手を生かす」という言葉があります。また

2、「この局面での最善手を指す」という考えもあります。

1ならば脱会のまま、2ならば再入会という、二者択一でした。今回は局面を冷静に見て、2の方針で指し手を選びました。指したからには後悔無しです。

さて。協会員になったからと言って、噺が上達するわけでもないですが、定席というのは未経験の場。それなりに対応が必要なので、苦しみながら、楽しむつもりです。「ライブ繁昌亭」の会員になって、常からリサーチしていたのが役立つかも。だとすると、月々\1,000は値打ちがおました。

それにしても新聞ちゅうのは、書きたいように書きますなあ。某紙「枝雀一門は、14年前、協会に所属していても仕事の斡旋がないなどの不満から脱会していた。」そんな不満なんか、誰も言うてへんがな。

某紙は南光兄さんの写真だけ載せて、見出しは「協会には戻りまへん」て。戻った我々をを記事にせんかいな。

某紙には「歌手の雀三郎さん、上方落語協会に復帰」て。そら歌も歌ってますけども、歌手て。

色々な人に相談して、色々な人の意見を聞いて色々な人に助けてもらって。動き甲斐のあった今回の協会への復帰入会活動でした。

間もなく30年。これからは落語界に恩返しせぇよ、ちゅうことだと受け止めています。

今年はこの号が最後かも。良いお年を。

以上、九雀さんからのメルマガを全文転載しました。ええ話でしょ。一人でも多くの人に読んでほしくって、九雀さんから了解を取りました。

新聞報道に、む雀さんのお名前もあったんで、ちょっと喜んでたんですよね。でも、こんな事情があったなんて全く知らんかったですわ。

わたい、む雀さんの芝居噺、好きなんですよね。「七段目」の梯子を上る場面なんか、瞼に焼きついてます。それが、いつの頃からか、お顔が見られなくなった。たぶん、ご病気だとは思ってたんですが。ご様子がわからず、心配してたんです。とにかく、お元気だということで何よりですわ。

枝雀一門のなおいっそうのご活躍を祈って。良いお年を・・・て、まだ日記は書きますけど。