早春賦

阪神の尼崎駅で停車中、車窓の風景を何気なく眺めていたら、桜が咲いていた。

「桜や。けっこう咲いとうなぁ」

声が出てることに気付く。独り言だ。あぶない。・・・春だ。

こないだ、阪急の十三から桂まで、ずっと大声で自問自答しているおばさんがいた。二言三言の短い会話が次から次へと出てくる。話題は自分の身の回りのことから時事問題まで多岐に渡っている。

「花粉症って目と鼻に来るでしょ。どうして耳はならないの? 同じ穴なのにねぇ」「耳鼻科行って聞かなあかんね」

琴線をくすぐられた。