つばくらめ 幾とせ続く 老舗かな

昨日は真っ青に晴れ上がった空。こんな文字通りの五月晴れはそうそうあるものではない。そんな絶好の陽気の中、こんな落語会の薄暗い客席にようこそおいでいただきました、と志の輔師匠。

独演会と生志真打披露興行で三席聴かせていただく。いつも思うことだが、新作の畳み掛けるように次から次と押し寄せる津波のような笑いは凄い! 日常の生活の中で、ふと浮かんだ小さな疑問。ちょっとヘンかな?と思った事柄をあれだけ大きな笑いに変化させる。津波の発生源も小さなうねりなんだろうし、まさに津波の笑いだ。

そして「江戸の夢」。志の輔師匠の人情噺で特筆すべきことの一つが間(ま)だ。限りなく長い沈黙。ラジオで師匠の高座は放送できないんじゃないかと思うくらい長い。

普通、落語はそのストーリーのシーンを、目に見える場景を聴き手が頭の中に描いていくものだ。ところが、師匠はそればかりではなく、ここというクライマックスで見せる長い間で、登場人物の心情の動きを聴き手に描かさせてくれる。心を描くとは、聴き手が登場人物と一体化するということか。

ラストシーンで、奈良屋をあとにした武兵衛の目の前に広がる、どこまでも突き抜けた、一点の雲もない皐月の空。燕が曲線を描いて飛び交う。会の初めの挨拶は、このシーンの振りやったんやなぁ。この日にこの高座は二度と聴けない。清々しさがいっぱいだ。

この日は落語を八席聴いたが、少しも疲れない充実した内容。真打披露した生志さんも今後の大成を大いに期待させる。テンポが耳に心地いい。現代感覚のクスグリのセンスもいい。

帰り、文楽劇場を出て、すぐ目に入った小さな看板。「絶対の自信 カレー天ぷらうどん」。さっき生志さんがマクラで言うてはった店だ。出番前にお腹が空いたので入った店で、カレーにしようか天ぷらにしようかとお品書きを見たら、カレー天ぷらうどんと肉カレーうどんの二品だけの店だった。店の人との話の流れで自分は噺家だと言ったら、その店の常連の噺家さんの話を延々と聞かされてんて。その常連の噺家さんがこの真打披露興行のゲストやっちゅうねん。

絶対の自信だからおいしいんだろうなぁ。

その看板のために横道に入ったついでにふらふらと黒門市場に。夕方6時を回ってたんで、シャッターを下ろしかけてる店も多かったけどね。わたいは市場を見たら、なんか市場で夕げのおかずを買いたくなる。市場の雰囲気は生活感があって好きだよね。

総菜屋が開いてたので、ほうれん草のおひたしと若竹煮。ほしたら、そこのおばちゃん「前ぇ一回来てくれたねぇ」。いや、そういや、ここで買うたことあるけども。4、5年前やで。車椅子はどんだけ顔さすねん。おそらく違う車椅子のことを言うてはるんやと思うけど、万一ホンマに覚えてはったんやったら・・・それだけ奇跡的に客の顔を忘れへんこの店も、奈良屋と同じく幾とせ続く。

mixiキリ番11,111番は、そらとびねこさんでした。最近、よくわたいの日記を覗いてくれはります。おめでとう&ありがとうございます。