メロン

レギュラーの現在進行形の日記には、タイトルの頭に【Now's the time】を付けると先日書いたけどやめます。清く正しい日記の方のタイトルの字数制限がけっこう厳しくて、頭に付けると残りの入力できる字数が限られてくるんで。まぁ、アーカイブスの方もレギュラーも、どっちも【】が付いてたら一見して紛らわしいから、そういう意味でも付けん方がええかと。

http://d.hatena.ne.jp/tanich/20090114(ケータイはhttp://d.hatena.ne.jp/tanich/mobile?date=20090114)で「カレンダーください」と書いたら、ホンマにいただいた。そのマイミクさんとはなかなか会う機会がなくて5月になったんだけどね。花屋のカレンダーということで母親が好きそうなんで、仏壇のある部屋に掛けようと思って。

バラが何回も出てくるし、季節の花ということもないんだけど、月々の写真のフラワーアレンジメントはもちろん季節感があって、爽やかだったり秋はシックだったりして、やっぱり母親も気に入ってくれてるだろう。

そんな花の写真に添えて、毎月、俵万智さんの短歌が書いてある。それは恋の歌だったり、日々の情景に自分の心情を重ねた歌だったりするんだけど、5月の写真に添えられた短歌がこれだ。

「母の切るメロンは甘し 四十になっても私はあなたの娘」

5月は母の日があるからね。母とメロンか・・・

5年前、最後の1ヶ月、母親は家で寝ていた。入院していたらその時にわたいが立ち会えない可能性もあるし、母親も最期は家で迎えた方がいいかと思って退院させた。入院していたときは意識が朦朧としていたんだけど、家に帰った当初は急に意識もしっかりしたし、退院して正解やったろう。

とはいえ、やっぱり日に日に状態は悪くなる。

そんな中、わたいにできることは、何もない。ホンマに何にもないのだ。日常、自分が介助を受ける立場で、そんな身がこれほど恨めしく辛かったことはない。

唯一できることは母親が食べたいものを買ってくることだ。家のもんは極力、外出時間を減らし、母親についとかなあかんしね。

初めのうちは母親も、まぁまぁ意識はしっかりとまではいかんでも、自分の欲しい物くらいは言えてた。母親が元気なときによく食べていた穴子弁当を何度か買いに行った。鰻とかも。そんなん好きやったんやわ。

欲しいもんも言えんようになってくる。母親の頭からわたいがおらんようになった。最後、自分が子供に戻ったからね。お父さんやお母さんを呼んでたわ。

いや、わたいのこと忘れてくれた方がええんや。わたいのこと心配しながら死なれるよりその方がいい。

それでもわたいにできることは好きなものを買ってくることだけ。喉の通りのええ物を買わなね。

そうなってくるとメロンでしょ、メロン。母親、好きやったもんな。

で、スーパーに買いに行くと、1個980円。こんなん買えるかい。最後のメロンになるかわからへんねんで。デパート行って、6,825円のを買った。冬だけど、西瓜もあった。今度はこれを買おう。結局、買えなかったけど。

メロンを買ってきたけど、食べてくれるかどうかわからなかった。でも、食べてくれた。食べてくれてよかった。ホンマによかった。最後に口にしたのもメロンの絞り汁やった。

わたいはメロン、嫌いやってんけどね、こんな高いメロン、もう食べる機会はないやろからご相伴に与った。

こんなにおいしい物を食べたことがなかった。ホンマにおいしかった。母親のメロン、嫌いやなんか二度と言わん。そんなん言うたら罰当るで。