お代り

「柳楽デレデレ、エリーと挙式」というニュースの見出しを見て「柳楽て、そんな噺家おったかな」と一瞬思うわたいはどうなんだろうか。

それはさておき、ラックシステムの「お代り」は、見終わった後、落語会に行ったような気分にさせられる舞台だった。わたいの意識はすべて落語へとつながっているのか。

短いエピソードが単発的に出てくる。だから落語会的なのだけれど。テーマは日常生活の根源的要素である「食」だ。ある一軒の家で百年に渡って綿々と繰り広げられる、食へのあくなき探求。未知なるおいしい物を求める好奇心。

一つのエピソード。幼さが残る頃に関東大震災を経験した老女優が神戸の震災にも遭う。その老女優の家に、家族とはぐれた少女が迷い込む。恐れと寒さに震える少女に、老女優は空腹では元気が出ないからと、黒豆を食べるよう促す。そして「食べ物に困らないところに行こう」と力強く言う。

唐突に黒豆と書いたけど、これがこの芝居のキーとなる食べ物だ。

神戸の震災があった年の秋、わたいはハンク・ジョーンズのディナーショーに行った。ディナーショーといっても「何でや!?」と驚くばかりの破格値だったんだけど。でも、料理は豪華フルコース。そんな豪華料理を目の前にして、わたいは避難所生活を思った。冷えたおにぎりや弁当があるだけでありがたかった。炊き出しのあったかい豚汁はごっつぉだった。

でも、豪華フルコースがいいや! あぁ、あさましきや、わたい・・・

ある種、これも人間の真理なんだろう。ということを改めて考えさせられる、笑いあり感動ありのいい芝居だった。日曜までやってるでー。東京公演もあるでー。