ぐだぐだ

亡き母親は、わたいが産まれてから四十半ばのおっさんになるまで、わたいのことをずっと「かわいい、かわいい」と言い続けた。「障害者はかわいなかったらあかん」というのが信条でもあった。まぁ、この信条は多くの障害者から反感を買うであろうが。「何で障害者は世間に媚びを売って、へーこらへーこら生きていかなあかんねん」ということで。その反感は至極ごもっともです。

ただ、わたいは車椅子のかわいいおっさんを目指している。刷り込みというものがある。半世紀近くも「かわいい」と言われたら、人間、そうもなります。持っている小物類もミッフィーちゃんのんとかね。車椅子に付けてる時計もオバケのスウォッチ。偶然、幽霊さんですわ。服装もかわいい柄系が多い。

内面的にもかわいいおっさんであり続けようと努めている。師匠がそうでしょ。どんなヤらしいことを言わはってもヤらしく聞こえない。お若い頃からそうだったから、生理用品のCMにも抜擢されはったのだ。失礼ながら、何をしても、どこかかわいいおっちゃんなのだ。わたいの進む道もこれだ。

だけど、母親が亡くなってから、この「かわいい」が聞けなくなった。言われてるときは「おっさんつかまえてそれはないやろ。もうやめてぇな」と思っていたが、いざ、言うてくれる人がおらんようになると、なんか寂しいというか物足りんのである。深層心理というのは恐ろしい。

今はカノジョが言うてくれるもんねーーー。「かわいいたにっち、かわいいたにっち」言うてくれるもん。「母親みたいやな」と言うても、マザコンのわたいを嫌がりもしない。わたいのすべてがかわいいそうだ。

ヘンタイあほカップルとでも何とでも呼んでくれ。二人がしゃーわせなら、それでいいのだ。

今日はちょっと寒かった。服を着たり脱いだりが自分でできないわたいは、ちょっとでも着脱がスムースにできるように一枚少なく着ていたので、よけい寒かった。わたいは何を考えているんだ?

だいたい、障害者は男女交際の経験の少ない者が多く、一たびそういうチャンスが舞い込めば、もう頭の中はピンク一色に染まってしまう。わたいはそういう多数派の障害者ではない。あくまで紳士なのだというわたいの言葉を彼女は真に受けてしまったようだ。ポーズやのに・・・

桜の木の下でカノジョが作ったおべんとを二人で食べて、あまりに寒いので「どこか入ろ」ということになったが、わたいのポーズを真に受けているカノジョの足がいかがわしいところに向かうはずもなく・・・

きっちゃてんで、ホットコーヒー飲む。わたいの向かいにカノジョがいて、その右、窓外のはるか遠くにラブホテルの看板が見える。

ぐずって駄々をこねるわたいを「よしよし、かわいいかわいい」と言って、髪をなでて左耳をそっとくすぐるカノジョ。

ぐだぐだぐだぐだ・・・・・

退廃的な昼下がりは極めて絵画的だったろう。

もっ、だいたい、わたいの冗談をカノジョはマジに取ることがままある。まぁ、そこがかわいいんだけど。

二人で「かわいいかわいい」言い合ってます。

初デートのリポートでした。

色ボケ日記はここらでひとまずお休み。レギュラーな状態に戻します。これ以上書いとったら、わたい、何書きだすやわからん。

今後の進展を綴った、実録官能小説を読みたい方はメッセージを。お友達特別料金にて配信いたします。