お坊さんとキリストさん

あるマイミクさんから出し抜けに落語に関する質問を受けた。君、みんな目をつむっとくから、挙手しなさい。

落語といっても小咄なんだけど。質問内容はこうだ。

小噺でお坊さんとキリストさんが出てくるの聞いた気がしますが
思い出せません。
キリストさんのは何かイェスとか何か言うてたような・・・

唐突でしょ。なんでまたわたいに、っちゅうことで。わたいは「つる」の横町の甚兵衛さんか? そりゃまぁ、生き字引ではあるけど。

わたいと甚兵衛さんの違いは知ったかぶりをしないところだ。お坊さんとキリストさん?・・・いや、全く知らんことはないんだけど、聞いた覚えはあるんだけど、はっきり「これや!」とは答えられない。この質問に関しては、質問者と同程度の知識しかないということで。いわば、そういうことだ。

ここで一言「知らん」と言ってしまえば済むことなんだけど、そこはそれ、心根の優しいわたいのこと、解決する手段を講じるのである。

mixiに「月刊 上方落語ファン」というコミュがあって、そこに初心者質問コーナーのトピを見つける。これですよ、これ! 窮地を救う一筋の光明だ。

落語に関するあらゆる質問をここに書き込めば、答を知っているどなたかが答を書き込んでくれるのである。初歩的なことでもなんでもよさそうなので臆することもない。で、書き込みました。「マイミクさんからこんな質問をされたんだけど、どなたか助けて〜」とね。質問の丸投げ? 困ったことを人に頼らなくてどうする。

「小咄ではなく、落語の『宗論』のことではないか」との書き込みが。いやまぁ「宗論」はわたいも知ってるんだけど、仏教とキリスト教のどっちがありがたいかの言い合いの噺だし、お坊さんもキリストさんも直接出てこないので違うとは思ったが、いちおう、マイミクさん本人に確認を。そしたら、やっぱり違うようだ。

他に有力情報もない。こうなりゃ、わたいがお坊さんとキリストさんの出てくる小咄を作って、強引に「これのことや!」と言いくるめようか。

と思ってとりあえず考えたんだけど、オチが「イエス」と限定されると、これが意外に難しい。無理やりひねり出した小咄。

「お前、部屋が汚いんで有名やったのに、今見たら部屋の中が整理整頓されて、えらい片付いとるやないか」「この頃、信心しとるもんで」「仏教か?キリスト教か?」「家すっきりし(す)とう」

・・・クルシイ。苦しいがしゃーない。最悪、これで言いくるめてしまおう。

あっ、お坊さんが入ってないわ。・・・しゃーない、これも飲んでもらおう。

マイミクさんとの話の成り行きで、お坊さんだけの小咄やったらわかるんやけどという話になる。この小咄はけっこうよく耳にする。

「向こうから坊さんが一人来よるで」「そう」

「向こうから坊さんが二人来よるで」「そうそう」

「向こうから坊さんが三人来よるで」「そうそうそう」

という風に、この小咄は四人五人とエンドレスに続くわけなんだけど、これを書いたら、なななんと、この小咄のことやとぬかす、いや、ほざく、いやいや、のたまうのである。

何でやねん!?これが答かいっ!?これやったら、他人様巻き込んで大騒ぎすることなかったんや。

そやけどさぁ、キリストさんはどうなったの? 入ってないやん。お坊さんとキリストさんが出てくる小咄の存在はどうなるの? 確か、なんかあったように思ったんだけど。わたいの記憶はええ加減なの?

とはいえ、こけるような内容の答ではあるんだけど、質問コーナーには解決したと書き込まなくてはならない。で、トピを開いたら、このコミュを取り仕切っているプロの噺家さんが名解答を書き込んでくれていた。すぐに答を書いたら味気ない。ちょっとの間、コミュの参加者のみんなに遊ぶ時間をくれて、議論が煮詰まってきた頃合いを見て、正解を書く。その間合いはさすがプロやねぇ。敬服する。

「あなたはキリスト教ですか?」「イエス」「あなたは仏教徒ですか?」「ほっとけ!」

これを読んで快哉を上げた。これやん、これやん、これですがな、わたいの記憶にあったのは!

最後に、このトピへのお礼の書きこみをコピペします。

kintaroh!さん、ホンマにありがとうございます。この感謝は私のマイミクさんの感謝でなくて私自身の感謝です。マイミクさんの質問の真相が今わかったんですが、それを書こうかどうしようか思ったんです。真相はこけるようなことなんで。でも、私、今、大爆笑したんで、やっぱり笑いは共有した方がいいですよね。

まさか「宗論」のことではないやろねと確認したついでに、お坊さんだけの小咄やったらわかるんやけどと、あの「向こうから坊さんが一人来よるで。そう」というのを書いたんですわ。ほしたらマイミクさん、その小咄やとぬかしやがる・・・。

えぇーーーーー!?

これかいや!? これやったら大騒ぎすることなかったんやがな。他人様を巻き込んでどうすんねやちゅうことですわ。

しかし、それやったらキリストはどうなったの? 私のうっすらある、お坊さんとキリストの小咄の記憶はどういうことなの?

と、悶々としかけたところのkintaroh!さんのお答えでした。ホンマにkintaroh!大明神です。あっ、神様一人増えましたな。

まっ、このマイミクさん「イエス」まで書いてるんで、この「ほっとけ」の小咄も聞いたことがあるんでしょうなぁ。頭の中でごっちゃごちゃになってるんだと思います。人騒がせの罪滅ぼしに、今度、kintaroh!さんにこのマイミクさんをご紹介しますわ。バツ1のメッチャ美人です。

このコピペで閉めようと思ったんだけど、この日記を書いてて、今初めてマイミクさんの質問内容をわたいが取り違えていたんちゃうかと気付く。

「キリストさんのは何かイェスとか何か言うてたような・・・」

の一行があるでしょ。この「のは」ですわ。「のは」ということはもう一つあるということだ。キリストさんのんとお坊さんのんと二つの小咄のことを聞いてたということか・・・

マギラワシイッチュウネン・・・