ヘベレケ

月曜、落語会の帰り、梅田から電車に乗る。わたいのあとから乗ってきた男、年の頃はわからん、30くらいか、ガタイのいい、メタボ系でしょね。それが車椅子席のわたいの真ぁ前に立つ。立つといっても、じっと立っていられない。フラフラのヨレヨレだ。手すりは持っているが、それでもフラフラのヨレヨレで、ドアにもたれている。もたれているが千鳥足だ。近くに立っていた女性客も逃げていく。他の客もチラッチラと見ている。

わたいはどっか逃げるということもできないし、中途半端に動いて、絡まれても一大事だから逡巡していたが、しばらくして、意を決して車椅子の向きを変えた。そんなもん、わたいの膝の上にでも座られたら、わたい、つぶされる。車椅子の操作部の上に尻餅つかれでもしたら壊されてしまうがな。幸い、壊れなくて、レバーでカンチョーてなことになったら、向こうはいい気味だが、そのカンチョーしたレバーを触って操って家に帰らなくてはならない。ゾッとするわ。

向きを変えてまもなく、案の定やわ、ドスンと巨体が崩れ落ちた。車椅子のサイドに当ったが、被害はない。危機一髪だ。向きを変えるのが間に合ってよかった。

近くにいた、この男と同じくらいか、ちょっと若いオニイサンが「大丈夫ですか」と言ってくれた。このオニイサンもさっきから、チラッチラッと見てはったので「なんや、こいつは」と思ってたんだろう。男の前にしゃがんで、意識のうつろな男の肩を叩いて「他の人(主にわたいだけど)の迷惑になってるから、次、西宮やけど、とりあえず、いっぺん次で降りよ、なっ」と男を促した。男は「あんた、誰?」と、酩酊状態にありがちな間の抜けたことを言っていたが、駅に着いたら、すんなりとオニイサンといっしょに降りていった。

このオニイサン、ええ人やね。厄介事には関わりたくないという風潮の世の中やのにね。オニイサン、西宮で降りるんやったんやろか。もし、違うけど途中下車してくれたんやったら、よけいになかなかできるこっちゃおまへんな。ありがとうです。