夫婦善哉は憧れるが京都冤罪は嫌だ

人はこうして誘拐犯と呼ばれるようになるんだろうか・・・。

先日、京都で落語と音曲、芝居との芸能交流に関する公開講座があって行ってきた。お友達と言ってくれてはるのでわたいもお友達と言わせてもらっていいでしょう、染雀さんも出てはったしね。創作和風味遊辞歌瑠(ミュージカル)「らくだ」も興味津々。

この「らくだ」は、花柳流の舞踊と清元の三味線と唄の掛け合いで、歌って踊って演じるという舞台。

以前、シネマ歌舞伎で「らくだ」を観たが、歌舞伎の方は大爆笑編。本家の落語よりも、純粋に笑いだけをクローズアップしたような脚色だった。比べて、この味遊辞歌瑠は一言で言うと粋の極みというか、精神的贅沢を堪能できる芸能だ。日本人に生まれてよかったとつくづく思う。カムチャッカに暮らしてたら、こんなん観る機会ないもんね。ラストの紙屑屋の酒乱ぶりは、さながら地獄絵図?を思わせて、いい盛り上がりだ。

さて、これが終わったのが夕方5時前。それから京都に行ったついでに、今度ある狂言のチケット買いに。講座があったのが四条烏丸の大丸の辺で、チケット買うのは府立医大病院の向かい。だいぶあるが、このくらいはてくてくと。普通はバスに乗るんだろうけど、バスなんか地元でも乗ったことがないので乗り慣れん。京都の街並み好きなので、40分ほど散策。

3分の2くらいは来たかな、高倉通堺町通柳馬場かようわからんけど北上。京都御苑に突き当たる手前の辺で、一人の男子が「こんにちは」。眼鏡をかけた小学3、4年生くらいか。わたいも大人のおっさんだから、挨拶くらいは返さなくてはならない。「あっ、こんにちは」。

すると「どこ行くの?」。狼狽・・・。「どこて、あのね・・・」と小さな声で口ごもりながら、苦笑いを浮かべて通り過ぎた。

京都御苑に突き当たったので東に曲がる。いや、変だ。何か後ろに気配を感じる。悪い予感がする。が、振り向くのが怖い。怖いがほっとくわけにもいくまいて。

振り向けば君がいた・・・

自転車こいでついてきとんねんや〜〜〜ん!?

これはあかんでしょうがぁ! 「あのね、ついてきたらあかんて。家に帰り」。百っぺらぺん、こう言って説得するも、聞く耳を持たない。警護してくれてはるらしい。「家に帰り」という言葉で、あらぬ方向に反応したようで、家まで送ってくれるらしい。神戸までのこの子の電車賃、やっぱりわたいが出さなあかんのか!?

ほっといて医大病院の辺まで行ったら、この子、帰られへんようになるかわからん。それはまずいでしょ。で、しゃーないから、この子が声を掛けてきたとこまで戻ることにした。そりゃそうでしょうが。「車椅子のおっさん、男子小学生をたぶらかせて連れまわす」なんか新聞に出た日にゃ・・・。

後戻りして十数秒、ふと後ろを見たら、子供、おらへんやないかーーーい!?

心変わりしたのね。あいそなしね。今までの熱烈積極的行動はなんだったの?・・・

ホンマに京都人は何考えとんかわからん。

そのあと、何にもせんと子供についてこられたとなっては落語ファンの沽券にかかわるので、ついてこられてから詠うというのも順番が逆ではあるが致し方なし「瀬をはやみ〜、岩にせかるる滝川の〜」と詠いながら、家路についたのであった。

まっ、これは辺りが暗くなって人通りがなくなった、神戸に帰ってからだけどねー。