ディア・ドクター

鶴瓶師匠のこんな顔を見たことがない。自信無げに人の顔を窺い、おどおどした表情。嘘をついてしか生きていけない、そんな怖さをひしひしと感じる。医療現場での嘘なのだから、それは想像に絶する。

けれど、師匠演じる伊野は逃げない。自分がいなくなれば無医村になるからという使命感からではない。自分の居場所がそこにしかないからだ。逃げても舞い戻り、ただ孤独と寄り添う。

人はみんな嘘をついて生きている。と思う。少なくともわたいは。化けの皮がはがれないように怯えながら。

そんなわたいが身につまされながらも、ホッと安堵できる、落ち着ける空間がこの映画にある。自分は自分が思っているより、案外、孤独ではないのかもしれない。ラストの笑顔はそうも囁きかけてくれる。

西川監督と師匠のコラボをまた見てみたい。

★★★★★