ズボンの裾から

大阪ビジネスパーク駅に着く。ホームから改札階へ。エレベーターの中で、ズボンの左足の裾から白い物がちょっと覗いていることに気づく。

何だろうかと思い、引っ張り出す。あっ! 小さく声が漏れた。目を疑った。

パンツだ!? こんなことがあり得るんだろうか? 世界仰天ニュース級ではないだろうか。

この世に神も仏もいた。わたいの他、誰もいなかったことが不幸中の幸いだった。他者に知られたくない。

しかし、このパンツをどうするのだ? パンツを持ってシアターBRAVAに行くのか? パンツの処遇が非常に難しい。他者にパンツを見られたらヘンタイのおっさんになる。

パンツをしまうところは小さいバッグしかない。たためば入れることは可能だ。でも、わたいがパンツをたたんでバッグに入れようとすると、傍から見れば難儀している状況に映る。どっかのオバサンが「お手伝いしましょうか」と近寄ってくることは必然だ。「これを」とパンツを見せるのか? ヘンタイのおっさんになる。

もう、どうしようもない。捨てるしかないではないか。トイレのごみ箱に捨てるのがなんとなく自然だ。

それで、車いす用トイレに入って捨てた。トイレを出て、衝撃を覚えた。女性トイレだった。わたいは普段、外出時、トイレに行かない。慣れてない。根拠なく、車いす用トイレは一ヶ所だと思い込んでいた。男性トイレにも車いす用はあったのだ。知らずに女性トイレに入ったわたいは、やっぱりヘンタイのおっさんだった。

何でパンツが出てきたか、気になる?

ズボンを脱がずにパンツを脱いだのではない。そんな、ゼンジー北京さんの奇術のようなことはできない。いや、ゼンジー北京さんもそんなアホなことはしないが。

前日、外出から帰って家着に着替える。わたいの家は、外と家でパンツも替えるという、由緒正しい家柄だ。で、ズボンとパンツをいっしょに脱ぐ。そのままほっとく。次の日、前日のパンツがズボンの中にあることがわからずに、うっかりズボンをはくとどうなるか・・・。

こんな人生です。