立腹

火曜午後5時、JR住吉駅。5時半に元町の恋雅亭に行く予定。それがJR名物人身事故で電車が止まってる。

5時半といっても、待ち合わせということもなく、どうしても行かなくてはならないということはない。最悪6時半に行けば、まぁいい。それには間に合うだろうと思い、待つことにした。

わたいの10分ほどあとに、もう一人車椅子のもんが来た。その人も待ちだした。改札階で待ってたんだけど、二人は少し離れたところにいた。

半時間ほどして、駅員の若い男がもう一人の方に何か喋っている。はっきり聞こえないが、状況説明かなんかだ。で、わたいには何もない。無視だ。わたいもよく見えるところにいた。物陰に隠れていたわけではない。

6時近くなって電車が動き出した。いや、わたいもすぐに乗れるとは思っていない。1時間近く改札で待っている間、ひっきりなしに改札を通った乗客がホームに向かっているのを目にしてるのだし、電車内もホームも混雑の極みだろう。1、2本あとになるだろうと覚悟していた。

ところが、さっきの若い奴がもう一人の方に歩み寄り、ホームに行くよう促したのだ。ほんで、わたいは無視。わたいは下りで向こうは上りなのかと思ったが、向こうも下りのホームに消えていった。

首尾よく最初の電車に車椅子客を乗せた若い奴が改札階に戻ってきた。わたいは若い奴が戻ってくる通路の真正面で待っていた。さすがに一言「どこまで?」 大声で叫んだ。「元町!」 あのなぁ、1時間前に俺はお前に同じことを言うとんじゃ!

「ホームで待ってて」 ホームに行った。ホームで、順番を無視した理由を聞こうと思った。

次の電車が来た。簡易スロープを持った若い奴は現れなかった。その次の電車が来た。現れなかった。これに乗らなくては6時半に間に合わないので、周りのお客に手伝ってもらって乗った。

帰りに苦情を言おうと思ったが、若い奴はいなかった。年配の駅員がいたので、そのおっさんに一部始終を話した。ほぼ100%伝わったようだ。

「気分悪くしたいうことやね。ごめんな」 こんな言い方だ。

この二人は脳性まひを馬鹿にしている。もう一人の方は脳性まひではない。骨折しやすくて歩けないという障害だ。もちろん言語障害もなければ、手も自由に使える。こういう病気とか、交通事故でせき髄損傷になった人と、脳性まひでは、同じ車椅子ユーザーでも、件の若い奴やおっさんのような心ない者の扱いは違うのだ。そして、こういう心ない者はそんなに少数でもない。

自分の意志と関係なく体が動く。その一環として顔がこわばる。言語障害がある。これらの要素で「あほ」だと思う。言語障害があるから何を言ってるかわからない。そこから、訳のわからんことを言っているというように短絡的思考になって「あほ」と判断されるというのが大きいのかもしれない。コミュニケーションが与える印象は大きいだろう。

これは被害妄想ではない。経験者は語るっちゅうやつだ。

いや、確かにわたいはアホだ。アホだけれど、アホだからといってアホ扱いしていいという法はないだろう。

余談だが、帰り、駅を出て1階に下りるエレベーターで、偶然にもあのもう一人の車椅子とばったり。

なんか言おうかと思ったが・・・よう考えたら、この人には何にも言うことがなかった。